インドの14世紀城塞で精霊に悩み相談、毎週木曜に手紙を届ける人々

インドの首都デリーにある14世紀の城塞遺跡に、毎週木曜日になると大勢の信者が集まります。目に見えない精霊「ジン」に宛てて、家族の悩みや苦情を記した手紙を届けています。

元のニュース:The Hindu(インド)(2026年10月30日・外部サイト)

フィローズ・シャー・コートラのハワー・マハルとアショーカ石柱(イメージ)インド
フィローズ・シャー・コートラのハワー・マハルとアショーカ石柱(写真はイメージです)写真: Vu2sga / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0・トリミング)
STEP 1

まずは、ざっくりニュース

インドの首都デリーにある「フィローズ・シャー・コートラ」は、14世紀に築かれた歴史ある城塞の遺跡です。

普段は静かなこの場所に、入場無料となる毎週木曜日の午後になると、何百人もの信者が次々と押し寄せます。

彼らのお目当ては観光ではなく、城塞に棲んでいると信じられているイスラムの超自然的な精霊「ジン」です。

信者たちは角砂糖やお香、バラの花びらとともに、ジンに向けた手書きの手紙を遺跡の小部屋に供えます。

手紙には恋人同士の喧嘩や意地悪な義母、お金や健康の悩みなど、あらゆる困りごとが公的な嘆願書のような形式で細かく書かれています。

さらに、ジンの王が毎晩法廷を開いて訴えを聞き分けると信じられており、信者たちはパスポート用の写真や自宅の住所まで添えて提出する徹底ぶりです。

訪れる女性たちにとってこの場所は実家のような心の拠り所であり、ジンは偏見なく耳を傾けてくれる頼もしい兄弟のように慕われています。

もし願いが叶ったときには、人々は近くの大きなモスクで祈りを捧げ、周囲のみんなに炊き込みご飯のビリヤニを振る舞って感謝を分かち合います。

STEP 2

ドヤ塾、本日の授業

ポカン君
ポカン君

先生、14世紀の古いお城に住む魔人に、毎週木曜になると人々が集まって手紙で悩みを直訴してるって…これ裁判所なんですか、それともお寺なんですか!?

ドヤ先生
ドヤ先生

裁判所でもあり駆け込み寺でもあるんじゃ! しかも嘆願書には、自分の顔写真や住所まで貼って正式な告訴状のように提出するんじゃぞ。

ポカン君
ポカン君

顔写真付きの直訴状!? 魔人に身元を全開にして出すなんて、役所の苦情窓口よりよっぽど手続きが本格的じゃないですか!

ドヤ先生
ドヤ先生

なんでもジンの王が毎晩法廷を開いて、どの訴えをすぐに解決すべきか判決を下すと信じられておるからな。角砂糖やお香を添えて順番を待つんじゃ。

ポカン君
ポカン君

魔人の王様が夜勤で書類審査してるんですか! そもそもそのジンって、魔法のランプに出てくるような怪しい魔物とは違うんですか?

ドヤ先生
ドヤ先生

イスラムの伝統的な精霊じゃよ。人間が泥から創られたのに対し、ジンは煙のない火から創られたとされておる。寿命があり、善悪を選んで自分の行いに責任を負うんじゃ。

ポカン君
ポカン君

善悪を選べるなら、ずるいお願いをしたら怒られそうですね。でも、なんで警察や役所じゃなくて、お城の精霊にすがるようになったんですか?

ドヤ先生
ドヤ先生

歴史をたどると、1970年代の非常事態宣言下の混乱に行き着くんじゃ。スラム撤去などで貧しい人々が公的な救済を失ったとき、正義と保護を求めて城塞に集まり始めたんじゃよ。

ポカン君
ポカン君

頼れる公的機関がなくなった人たちが、最後の拠り所として精霊の裁判に託したんですね…ただのオカルトじゃなくて切実な歴史ですよ。

ドヤ先生
ドヤ先生

そうじゃ。特に女性たちにとって、この城塞は実家を意味する「マイカ」と呼ばれ、意地悪な義母や家庭の悩みを偏見なく聞いてくれる頼もしい兄弟のように慕われておるんじゃ。

ポカン君
ポカン君

身内のドロドロした愚痴を「頼れるお兄ちゃん」に聞いてもらう感覚なんですね。それで、もし奇跡的に願いが叶ったらどうするんですか?

ドヤ先生
ドヤ先生

モスクで祈りを捧げ、なんと広場でみんなに炊き込みご飯のビリヤニを振る舞って感謝を行動で示すんじゃよ!

インドの炊き込みご飯ビリヤニ
インドの炊き込みご飯ビリヤニ(写真: Umesh Tongbra / Wikimedia Commons・CC BY-SA 3.0)
ポカン君
ポカン君

うわ、大皿に山盛りのビリヤニ、黄金色のお米とお肉がめちゃくちゃ美味しそうです! ぼくなら悩み相談のついでに、誰かビリヤニ配ってないか城内をパトロールしちゃいますよ。

ドヤ先生
ドヤ先生

願いを叶えてもらう側ではなく、おこぼれのビリヤニ目当てとはのう…おぬしの図々しさにはジンも呆れて法廷を閉廷するわい。

STEP 3

ついでに知りたいインド

フィローズ・シャー・コートラの円形階段井戸(バオリ)
フィローズ・シャー・コートラの円形階段井戸(バオリ)(写真: Kumarssp / Wikimedia Commons・CC BY-SA 3.0)
フィローズ・シャー・コートラ内のモスク遺跡と中庭
フィローズ・シャー・コートラ内のモスク遺跡と中庭(写真: Varun Shiv Kapur from New Delhi, India / Wikimedia Commons・CC BY 2.0)
インドの基本データ
首都
ニューデリー
人口
約13.3億人
言葉
ヒンディー語・英語など
お金
インド・ルピー(1ルピー=約1.7円。2026年10月の目安)
時差
日本より3.5時間遅い(夏時間は除く)
  1. 1

    デリーは時代ごとに「7つの都市」が築かれて発展した歴史があり、今回の城塞はその5番目の都市にあたります。

  2. 2

    城塞の屋上にあるアショーカ王の石柱は、14世紀に42輪の特製荷車を200人で引いて運ばれたと伝わります。

  3. 3

    敷地内にはデリーで唯一の珍しい円形の階段井戸(バオリ)があり、かつて地下水路から水が引かれていました。

ことば解説
ジン(Djinn)
イスラム教の伝承に登場する超自然的な精霊。煙のない火から創られたとされ、人間と同じく善悪を選び、寿命を持つと信じられています。
ハワー・マハル
城塞内にある小部屋が重なるピラミッド状の建物。信者からは「ジンの家」とみなされ、手紙やお供え物が捧げられます。

この記事の出典と参考資料

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